予防接種について

予防接種って?ワクチンって何?

「ワクチンで防げる病気」をVPD と呼びます。

VPD とは、Vaccine Preventable Diseases の略です。

●Vaccine("ヴァクシーン")= ワクチン●Preventable(“プリヴェンタブル")= 防げる ●Diseases(" ディジージズ")= 病気

つまり、VPD とは「ワクチンで防げる病気」のこと。ワクチンで病気を防ぐことの大切さをよく知っていただくために、VPD という言葉を使われています。これからVPD やワクチンについて、たくさんお話ししますが、とても大切なことです。なぜかというと、VPD は、子どもたちの健康と命にかかわる問題だからです。

VPDは子どもたちの健康と命にかかわることです。

子どもたちがかかりやすいVPDには、次のようなものがあります。

ワクチンで防げる病気

子どもの免疫とワクチン

子どもの感染症は予防が第一です。

乳幼児期には免疫(病気に対する抵抗力)が未発達なため、さまざまな感染症にかかります。そして感染していくことで免疫をつけながら成長していくのです。でも、子どもがかかりやすい感染症は、かぜのように軽いものだけではありません。中には、確実な治療法がなくて、深刻な合併症や後遺症をおこしたり、命を落としたりする危険がある病気もあります。そうした感染症は、かからないようにまず予防することが大切です。

ワクチンこそ、もっとも安全な予防方法。

感染症を予防するのに、安全で確実性の高い方法が、ワクチンの接種です。ワクチンは、病気を防ぐために必要な免疫を安全につける方法です。ワクチンを接種することで、子どもたちを病気から守ることができます。

でも、すべての感染症に対してワクチンが作れるわけではありません。ワクチンで防げる病気(VPD)は、ごく一部にすぎません。ワクチンを開発するのはとても難しいことで、困難を乗り越えてまでワクチンが作られたのは、それが重大な病気だからです。VPDはいったん発病すると、現在の医学でも根本的な治療法はないか、治療がとても難しいのです。せっかくワクチンというすぐれた予防法があるのに、使わないのはとてももったいないことですね。大切なわが子を守るためにも、ワクチンのメリットを最大限にいかしましょう。

ワクチンの種類( ワクチンには、次の3種類があります)。

生ワクチン

生きたウイルスや細菌の病原性(毒性)を、症状が出ないように極力抑えて、免疫が作れるぎりぎりまで弱めた製剤。自然感染と同じ流れで免疫ができるので、1回の接種でも充分な免疫を作ることができます。ただ、自然感染より免疫力が弱いので、5~10年後に追加接種したほうがよいものもあります。ワクチンの種類によっては、2~3回の接種が必要なものもあります。副反応としては、もともとの病気のごく軽い症状がでることがあります。

該当するVPD

ロタウイルス感染症、結核、麻しん(はしか)、風しん、おたふくかぜ、水痘(みずぼうそう)、黄熱病 など

不活化ワクチン

不活化ワクチンは、ウイルスや細菌の病原性(毒性)を完全になくして、免疫を作るのに必要な成分だけを製剤にしたものです。接種しても、その病気になることはありませんが、1回の接種 では免疫が充分にはできません。ワクチンによって決められた回数の接種が必要です。

該当するVPD

B型肝炎・ヒブ感染症・小児の肺炎球菌感染症・百日せき・ポリオ・日本脳炎・インフルエンザ・A型肝炎・髄膜炎菌感染症、狂犬病 など

トキソイド

感染症によっては細菌の出す毒素が、免疫を作るのに重要なものもあります。この毒素の毒性をなくし、免疫を作る働きだけにしたものがトキソイドです。不活化ワクチンとほとんど同じです。

該当するVPD

ジフテリア、破傷風(はしょうふう)など

ワクチンの安全性

ワクチンはこわくないの?

ワクチンは接種した後の副反応がこわいと思っている人がいるかもしれませんね。実際には、接種した場所が赤く腫れたり、少し熱が出る程度の軽い副反応がほとんどです。

ワクチンを接種した時に起こる副反応と、ワクチンを接種しないでその病気にかかった時の危険性をくらべると、ワクチンを接種しないで重症になった時の方が、ずっとこわいといえます。ワクチンの価値は相手の病気の恐ろしさによって決まるのです。

ワクチン接種は、国連のWHO(世界保健機関)を中心に、世界中で推進されています。世界中でこれほど多くの人に使用されている薬剤(ワクチンも薬の一種です)はありません。そのうえ、ワクチンほど接種した後の調査が行き届いているものはありません。欧米では、多くの科学的な調査が徹底的に行われ、ワクチンの安全性が証明されているのです。

本当の原因はワクチン?

ワクチンを接種後に、高熱を出したり、脳炎を起こしたという話が報道されることがあります。
でも、これが本当にワクチンのせいかというと、ワクチン接種後に起こったというだけでは、断定できません。もしかしたら他に原因があって、それがたまたまワクチンを接種した時期に起こったかもしれないのです。たとえば、接種後にたまたまかぜをひいて熱を出した、というケースもよくあります。

かつて3種混合ワクチン(DPT;ジフテリア・百日せき・破傷風混合)が脳障害を起こすのではないかと疑われたことがあります。米国で多くの研究が行われましたが、その結果、このワクチンを接種した赤ちゃんと接種していない赤ちゃんの脳障害発生率に差はありませんでした。米国の小児科学会もその関係を否定しています。日本でも同様な調査があって、接種を受けた後に脳障害が起こっていても、この年齢での接種を受けなくても脳障害が起こる確率(自然発生期待値ともいいます)を超えるものではありませんでした。つまり、ワクチンが脳障害を起こす原因だとはいえなかったのです。

他の副反応に関してもいろいろな研究が行われていて、ワクチンが本当の原因と断定できる重大な副反応は、ほとんどありません。接種局所の反応(赤くなったり、しこりができたりなど)と、接種直後にショックが起こった時以外のことは、医師にもワクチンのためかどうか、判断が難しいのです。

ワクチンを接種する時注意しなければいけない子どもは?

まず、ワクチンの成分に対して極めて強いアレルギー(アナフィラキシーと呼びます)がある場合です。この場合は、そのワクチンの接種はできません。接種を受けるとショックを起こす危険性が高いのです。そこまででなくても強いアレルギー体質がある時は、主治医と相談してください。また、生まれつき免疫が極めて弱い先天性免疫不全症がある場合や、小児がん治療などで免疫を抑える薬を使用している場合も、主治医と相談してください。その他、特別な病気のある場合も同様です。逆に言えば、こういう場合以外は、安心して受けることができます。

たくさんワクチンを接種しても大丈夫なの?

2020年10月から、定期接種のワクチンは10種類。これだけの数を接種すると、子どもの免疫に影響を与えるのではと心配になるかもしれませんが、日本に比べてワクチンの種類も接種本数も多い米国では、生後2か月の赤ちゃんは、未熟児でも6種類のワクチンを同じ日に受けます。生後4か月も5種類。ワクチンの種類は合計で16種類にもなります。

そこで、米国の著名な医師が保護者向けにワクチンの本を出版して、安全性の根拠を示しています。この本によれば、今あるワクチンを10種類くらい接種しても、免疫システムへの負担は全能力の0.1%くらいだといいます。

何より、実際に受けた子どもたちに問題が起こっていない事実が、安全性を証明しているといえるでしょう。