断乳(だんにゅう)・卒乳(そつにゅう)

断乳(だんにゅう)・卒乳(そつにゅう)

断乳ってなに?

お母さん側からの理由や都合で、無理矢理におっぱいを止める方法です。従って断乳する時期や理由についてみると、赤ちゃんに歯が生えてきたので噛まれて痛い、栄養的にミルクと変わらなくなった、何時までも与えると甘え癖がつくというような所のようです。

卒乳ってなに?

一方最近では自然卒乳という考えが定着してきました。卒乳とは赤ちゃんが自ら母乳を止める時を決めます。国際母乳連盟はこの自然卒乳を推奨していますし、私たちの日本母乳の会もその線に沿った考えをしています。赤ちゃんが自立して行けば、自然にお母さんのおっぱいから離れて行きますよというのです。決して放任とは違います。だらだらと無意味に飲ませているのではありません。

ドクター

ところで栄養的に母乳を見ますと、6ヵ月から9ヶ月にかけてが断乳の時期といわれます。つまり栄養的に人工乳や離乳食と差が無くなる時期であり、母乳以外の食べ物からの栄養も必要となってくる時期なのです。しかし確かに1才を過ぎる頃からは、おっぱいが無くても離乳食やミルクだけで、栄養的には十分足りています。

しかし赤ちゃんの心身の発育には、食べ物からの栄養素のほかに、いつも安定した心でいられる心の栄養素が必要なのです。 其の心の栄養素こそお母さんの乳房からのおっぱいに加えての、お母さんの懐の温かさと肌のぬくもりであり、心安らぐお母さんの匂いであり、お母さんのオッパイの味で、これこそが、おっぱいに加えて赤ちゃんの心を安定させてくれるのです。

1才を過ぎるとおっぱいは赤ちゃんの心の安定に役立つ精神安定剤となるのです。 この頃からお母さんの懐は、赤ちゃんの心のベースキャンプ、心の安全基地へと変化します。赤ちゃんが寂しい時、悲しい時、つらい時、苦しい時、不快な時、不安な時、このような時に赤ちゃんの心を慰めてくれる役割を果たすのが、この時期のおっぱいなのです。

赤ちゃんが自立することは、未知の世界に踏み出し、体験することです。其の過程には恐ろしいこと、不安なこと、勇気の要ること、苦しいことなど、様々な初めての体験をします。その時の赤ちゃんの心を慰め、励まし、安定させてくれるのがおっぱいであり、お母さんの懐なのです。赤ちゃんにとって絶対的な安全基地があるからこそ、赤ちゃんは安心して冒険心を満足させ、未知の世界を体験し、やがて自立への道を歩んで行くのです。

子どもがスムースに自立して行くには、其れまでにお母さんとの心理的一体感の世界を体験し、母と子の絆、両者の基本的信頼感basic trustが醸成されていることが必要なのです。 おっぱいを巡る母と子のこころの交流には、この様な大きな意味が含まれており、しかも、授乳という場は自然に、しかも理想的な形で母と子にその場を提供してくれます。 世間ではこの時期になるとおっぱいの質が低下?するとか、成分が悪くなるから断乳しなさいと指導する人もあるようですが、決してそのようなことはありません。確かに生後300日頃になると、母乳中の脂肪や蛋白質の量が僅かながらも低下しますが、これは質の低下ではなく、正しい離乳の必要性を示している現象なのです。

おっぱいをいつまで飲ませてよいのか?

でもいつまでもおっぱいを飲ませていると自立心の無い子に育つといわれました。昼間は全く飲みませんが、夜眠るときだけです。それでもやめねばなりませんか。

おっぱいをいつまで飲ませてよいのか?

この質問は、私たち日本母乳の会の運営委員が共同して作った「母乳育児・なんでも Q& A」婦人生活社発行の中に、掲載されている或るお母さんの悩みです。其れに対する回答をここに引用しましょう。

「自立心がなくなる」・・・こういう言葉はお母さんがたをドッキリさせます。子育てでお母さんたちを一番不安にするのは、何かあった時、このままの状態から先へいけるかどうか分からないということです。

このままずっと甘えん坊になるのではないか。おねしょうにしても、ずっとおねしょうをしているのではないだろうかと・・・。赤ちゃんが成長していることが分かっていてもつい不安になってしまうのです。此の方もそうです。 今、お母さんのおっぱいを飲んでいるように、甘えん坊のまま・・・という心配でしょう。安心してください。小さい時に、御母さんに抱っこされ、充分に甘えて育った赤ちゃんほど、自立心が強くなるのです。

これは国際母乳連盟(ラ・レーチェ・リーグ)の調査でもはっきりしています。寧ろこのオッパイ子達には、独立心のある人間に育っているという共通点があったということです。 日本母乳の会の南部春生先生は、母乳の栄養学的断乳は9ヶ月、心理学的卒乳は2~3才であり、断乳よりは自然卒乳を指導しておられます。

しかし多くのお母さんの中には、どうしても少し早くオッパイを卒業させねばならなくなる方もあるかと思います。その際お母さんが心がけるべき事、少しお手伝いするとスムースに卒乳できる方法があります。以下オッパイ博士で知られた故山内先生が、「初めての母乳育児と心配事解決集」婦人生活社発刊に紹介してある卒乳のコツをお知らせしましょう。 心を鬼にして止めるのはよいことではありません: やめることにしたならば、赤ちゃんと対話しながらステップを踏んでいって欲しいと思います。「今日から断乳」とばかりに、心を鬼にしてオッパイをあげない、泣いてもほっておくというやり方はよい方法ではありません。

そしてお母さんは中々心を鬼に出来ないでしょう。赤ちゃんが自ら止める時が自然卒乳です。もしお母さんが未だ母乳育児を楽しみたいなら、どうぞ続けてください。オッパイを止めたいと思っていても、決して無理をしないでください。

ではどのようにしたら良いでしょうか。

解決策

一番大切なことは、赤ちゃんが納得するかどうか、了解の上で止めることです。其のためには、赤ちゃんに対する話し掛けをすることですね。「えっ、こんな小さな赤ちゃんに 話し掛けたって分からないわ。納得なんてムチャよ」と思われるかもしれません。

しかし1才を過ぎていれば、赤ちゃんはかなり多くの事を感じています。細かい言葉の意味は分からなくても、状況は分かるのです。 でも、オッパイを止める時期になって、突然話し掛けても駄目ですよ。栄養的にはもう必要ないからといって止めるのではなく、赤ちゃんの心を一寸考えて、止め方を工夫しましょう。

おっぱいを飲ませた後、赤ちゃんの心が満たされている時に話を。 時期が何時になるにせよ、お母さんと赤ちゃんとの会話の中で、何時かオッパイは卒業して行くこと。其れは大人になる第一歩。オッパイより楽しいことがあるのだとさりげなく話しておくのです。その時いくつか押さえておきたいポイントをお話しましょう。 

  • オッパイを止めたいと思ったら、以下月ほど前から話し掛けて、赤ちゃんに心の準 備をさせておきます。
  • おっぱいを飲ませた後、満足した所でお話します。
  • お母さんが止めることばかりに意識が集中していると、赤ちゃんは益々しがみ付き ます。
  • 「ダメ、イケナイ、本当に赤ちゃんなんだから・・・」などの禁止や否定的な言葉は 使わないようにしましょう。

必死に言い聞かせてやめさせるのは逆効果

いついつまでには絶対に止めさせてみせる、止めさせたいと思って必死に赤ちゃんに話し掛けるお母さんを見かけます。逆効果です。益々オッパイにしがみ付きます。 この赤ちゃんはお母さんの語り掛けの調子から「何か大変なことが起こりそうだ。やっぱりおっぱいを飲んでいなくては、恐いよ。」とでも感じたのでしょうか、益々オッパイを要求するようになりました。

そこで、このお母さんはハタと気づきました。オッパイを止めようと思うのは、全く私の都合だけ。考えてみれば・・・例えば保育所に入るのは・・・子どもにとっては環境ががらりと変わることだから、、逆にオッパイが必要なのかもしれないわ。この事にきずいてから早めようという気持ちを捨て、朝起きた時、そして出かける時、保育園に迎えにいった時、夜、眠る時にはしっかりと飲ませました。

そして止めることにこだわらなくなったら、1才半で夜眠る時だけになり、2才で夜眠る時もなくなりました。 オッパイの止め方は、いろいろあって当たり前ですが、自然な形が一番です。一気に止めないと駄目というのは、母子双方に無理を強いることだと思います。1才を過ぎればお母さんの話は分かりますから、丁寧にお話して、赤ちゃんが自然に離れて行くのを待ちましょう。もし、うまくいかない時は、「赤ちゃんにはオッパイが必要なのだ」と理解して、もうしばらく母乳育児を楽しんで見られたらどうでしょうか。

おっぱいをいつまで飲ませてよいのか?

お母さんのおっぱいの手当。おっぱいが張ってきますので手で絞っておきます。

貴方の乳房は飲ませないでいると、しばらくは張ってきます。其のままにしておくと乳腺炎になることもあります。張ってきたオッパイは搾っておきましょう。いつまでも搾っていたらたまらないのではないかという心配は無用です。 赤ちゃんが吸わなくなるとオッパイは自然に、しかも徐々に少なくなって行きます。大体1週間くらいで楽になるでしょう。

もし仮にどうしてもカチカチになる場合には、産科の診療所をたずねると、オッパイの分泌を止める、或は少なくする薬が頂けると思います。

甘えっ子になったり、自立心の無い子供に育つという心配

ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(国際母乳連盟)の報告によりますと、乳離れが遅いという子を継続的に観察してみますと、3~4才になって共通することが見つかりました。どの子どもも自立心が旺盛で、依頼心が強くなく、元気一杯でした。心配は要りません。甘えさせることがいけないという考え方は、育児に鉄は熱いうちに打て、という発想を持ち込んだものです。赤ちゃんというのは保護されないと生きて行けない存在ですから、しっかりと要求を聞いてあげることが何よりも大切なのです。

それは甘えに見えるかもしれませんが、大人の考えるような甘え(わがままということでしょうか)とは質的に違うのです。赤ちゃんにとってお母さんのオッパイはベースキャンプです。ベースキャンプがあればこそ、自立への道をしっかりと歩めるのです。赤ちゃんがオッパイを求める時はどのような時でしょうか。お母さんに叱られた時、公園で遊んでいて友達からいじめられた時、貴方と夫がけんかをした時、又、お舅さんとお母さんが仲たがいをした時・・・・・などではないでしょうか。 

子どもの心の不安定さ、不安の心を静めてくれるのがお母さんのオッパイなのです。オッパイを含むことによって不安の心が解消され、又、新しい世界へ出かけることが出来るのです。もしなにかのふあんをかかえているときに「ダメ}とオッパイを撥ね付けてしまったら、子どもの心は満たされないままですね。

勿論、ヤンチャになった子どもの世話に疲れている時もあるでしょう。なんとなくうっとおしい時もあるかもしれません。つい「オッパイなんか駄目よ」と言ってしまうかもしれません。其れはある程度仕方の無いことかもしれません。 そんな貴方の態度をよしとするのではなく、赤ちゃんがオッパイを求めるのはこの様な心の状態で、あり、其れに応えてあげることで自立心のある子どもに育つのだと言うことを覚えていてくださればよいのです。(山内逸郎)

おっぱいをいつまで飲ませてよいのか?

おっぱいを卒業したとしても、時には、オッパイは心の安定剤

  • ついおっぱいなんてとしかりがち。でも大目に見て
  • 幼児になっても”オッパイ”の存在は、心の安定剤
  • もっと私の方を向いてというサイン